【この記事の作成・監修】
大阪市立総合医療センター小児青年てんかん診療センターの専門医の先生方

てんかんをお持ちのお子さんの学校生活にはいくつかの注意点が必要です。しかし発作を恐れて、学校生活における活動を一律に禁止することは、子どもが差別感を感じたり、心理的な負担を抱えるだけでなく、子どもの成長・発達に必要な運動能力や社会生活能力が形成されにくくなる、自我や自信が育ちにくくなるなどのデメリットがあります。
発作の起こりやすいタイミングや誘因など、気を付けるポイントについて医師に確認し、学校と共有しておくことが大切です。

目次:
1.気を付けるポイントの例
 1-1. 体育
 1-2. 体育以外の授業
 1-3. 宿泊・校外学習
2.園や学校への伝え方
3.園や学校における薬の使用について
  ■ジアゼパム坐薬(ダイアップ坐薬🄬)
  ■ミダゾラム口腔用液(ブコラム®)
  ■ジアゼパム点鼻液(スピジア®)
4.学校生活関連するQ&A​
5.学校生活に関連する読みもの

気を付けるポイントの例

1. 体育

プール​
 

激しくぶつかり合うもの
(ラグビー、柔道など)​

スピードの速いもの
(スキー、スケート、自転車競技など)​

高いところで行うもの
(鉄棒、登り棒、登山など)​

【プールの授業で気を付けるポイント】

見守り(監視)、救助体制を徹底する​

飛び込んだり、深く潜らない​

休憩をとりながら泳ぐ​

炎天下では疲労がたまり易いので気をつける​

2. 体育以外の授業​

「火」や「刃物」などの危険物を扱う事のある授業には気をつけましょう。

理科の実験

技術実習

家庭科実習

図工・美術の授業

3. 宿泊・校外学習

1. 規則的な生活を送り、指示どおり服薬を続ける

2. 無理のないスケジュールで睡眠時間 を十分にとる​

3. 不安や緊張を著しく高める遊びは避ける​

4. 薬は多めに持っていく

5. 飲んでいる薬の内容、家や病院の連絡先を書いたメモを身につけておく​
 

6. スケジュール(発作が起きた時に注意すべき活動はないか)や薬の内服タイミングなど、事前に学校側とよく相談しておく

園や学校への伝え方

園や学校にいる間、先生がお子さんの一番のサポーターです。発作症状・発作後の状態・発作の誘因・使用しているお薬について詳しく伝えるようにしましょう。

園や学校へ、こどもにてんかんがあることを説明するときのポイント 

幼稚園・保育園・学校などに、こどもにてんかんがあることを説明するときは、「てんかん」であることの診断書だけでは、現状が正しく伝わらないことも少なくありません。以下の点に注意しながら、担任の先生や学校の責任ある立場の先生と、直接話し合う機会があればよいと思います。

  • てんかん発作の症状、頻度、起こりやすいタイミングなど具体的伝える 
  • 発作時の対応について共有(緊急処置薬のタイミング、救急搬送のタイミングと搬送先など) 
  • 前述の学校生活で気を付けるポイント(プール授業など)やその対応について、事前に主治医と相談しておく
  • 過度な制限や不当な対応を受けないように、粘り強く話し合う。

書面による医師からの指示書の作成方法

 学校への指示書の記載は医師が行う必要があります。受診の際に、医師に記載してもらうように依頼します。発作時に現場での複雑な判断が必要にならないように、できるだけシンプルなものが望まれるので、主治医と相談しておきましょう。各自治体によって、フォーマットは異なります(例えば、大阪府のものは こちらで確認できます)。 

園や学校で使用されることがあるお薬について

園や学校で使用されることがあるお薬のうち、「ジアゼパム坐薬(ダイアップ坐薬🄬)」「ミダゾラム口腔用液(ブコラム®)」「ジアゼパム点鼻液(スピジア®)」について、知っておきたい特徴や使い方を解説します。

■ジアゼパム坐薬(ダイアップ坐薬🄬)

けいれん重積治療ガイドラインには、ジアゼパム坐薬に関して、以下の記載があります。 

「日本での効果・効能は「熱性けいれん及びてんかんのけいれん発作の改善」である。発作予防に対する有効血中濃度(>150-350ng/ml)に達するのは投与後30分以内であり、8時間間隔で2回挿肛することで予防治療域濃度を24時間保てる。急性けいれん発作発症後に治療として使用した報告は少なく、目前のけいれんを収束させる適切な使用量(けいれん発作収束が期待される血中濃度は、発作予防に対する濃度より高いことが推定される)、有効性のエビデンスはない。挿肛後ピーク濃度に達するまでの時間が遅いため、救急治療目的には適さない。」 

つまり、ジアゼパム坐薬は、効果が出るまで少なくとも15-30分以上かかると推定されるため、目の前で生じている発作を速やかに消失できる効果は期待できないと考えられています。しかし、病院搬入まで時間を要するような場合などで、発作の群発を防ぐ、搬送中に発作を収束させる、病院搬送後の治療に繋げる、などの可能性があります。総務省の公表では、救急要請から病院搬入までの平均所要時間は約40分とされていますので、現状ではジアゼパム坐薬の効果と限界を踏まえて使用する必要があります。 

【参考資料 】

学校におけるジアゼパム坐薬の使用について

学校におけるてんかん発作時の坐薬挿入については、平成28年2月29日付けで文部科学省による規定があります。学校現場等で児童生徒がてんかんによるひきつけを起こし、生命が危険な状態等である場合に、現場に居合わせた教職員が、坐薬を自ら挿入できない本人に代わって挿入する行為については、以下の4つの条件を満たす場合は、医師法第17条(医行為)の違反とはならないとされています。

また教育・保育施設等(保育園、幼保連携型認定こども園、放課後児童健全育成事業、放課後子供教室等)におけるてんかん発作時の坐薬挿入についても、現場に居合わせた教育・保育施設等の職員又はスタッフが行う場合は同様とされています。一連の行為については、プライバシーの保護に十分に配慮するよう明記されています。

■ミダゾラム口腔用液(ブコラム®)

ミダゾラム口腔用液(ブコラム®)は、てんかん重積状態に対して使用する緊急時のレスキュー薬です。日本では2020年に承認され、同年12月から販売されています。欧州では2011年に承認されており、日本に先行して長年使用されてきました。

有効成分は、ベンゾジアゼピン系薬剤のミダゾラムです。あらかじめ薬液が充填されたシリンジを用い、歯ぐきと頬の間にゆっくり注入します。頬粘膜から薬剤を吸収させるため、けいれん中に薬を飲み込む必要がないことが大きな特徴です。また、下着を脱がせる必要がなく、車椅子に座った状態でも投与できるなど、緊急時に使用しやすい利点があります。

効果の発現が早いことが利点の一つです。臨床試験では、投与された小児の80%で10分以内に目に見える発作が消失し、その後30分間、発作を認めませんでした。

投与量は年齢によって決められており、修正在胎52週以上1歳未満は2.5 mg、1~5歳未満は5 mg、5~10歳未満は7.5 mg、10~18歳未満は10 mgを1回投与します。保護者などが使用する場合は、原則として1回分(シリンジ1本)のみを投与します。

家庭だけでなく、学校、保育所、認定こども園などでも使用できるよう、環境整備が進められています。2022年には文部科学省・厚生労働省などから通知が出され、医師からの書面による指示や保護者からの依頼など、一定の条件を満たした場合には、教職員や保育士などが患児に投与しても医師法違反にはならないことが示されました。

一方で、まれに呼吸抑制を生じることが報告されております。そのため、使用する発作の特徴、投与方法、投与後の対応、救急要請の目安などについて、あらかじめ主治医と十分に確認しておくことが重要です。なお、3~6か月の乳児への投与は、必要時に救急蘇生が可能な医師の監督下に限られます。

【参考資料】

■ジアゼパム点鼻液(スピジア®)

ジアゼパム点鼻液(スピジア®)は、てんかん重積状態に対して使用する緊急時のレスキュー薬です。日本では2025年6月に承認され、同年12月から販売されています。国内初のジアゼパム点鼻製剤で、2歳以上の小児から成人まで使用できます。なお、米国では同様のジアゼパム点鼻製剤が2020年から使用されています。

有効成分はベンゾジアゼピン系薬剤のジアゼパムで、ジアゼパム坐剤(ダイアップ坐剤®)と同じ成分です。あらかじめ薬液が充填された点鼻容器を鼻腔に挿入し、1回噴霧するだけで投与できることが大きな特徴です。投与方法を間違えることはまずありません。薬を飲み込む必要がなく、下着を脱がせる必要もないため、発作時にも比較的速やかに投与できます。

投与方法は用量によって異なり、5 mgおよび10 mgは片側の鼻腔に1回噴霧します。15 mgでは7.5 mgを左右の鼻腔に1回ずつ、20 mgでは10 mgを左右の鼻腔に1回ずつ噴霧します。

効果の発現が早いことが利点の一つです。臨床試験の反復投与期では、初回投与された91回の発作のうち98.9%が10分以内に消失し、80.2%では10分以内に発作が消失した後、30分間再発を認めませんでした。発作消失までの時間の中央値は1分でした。

投与量は年齢と体重によって決められ、通常、成人および2歳以上の小児に5~20 mgを1回鼻腔内投与します。効果が不十分な場合には、4時間以上あけて2回目の投与が可能です。ただし、6歳未満では1回15 mgを超えて投与しません。また、2歳以上6歳未満への投与は、必要時に救急蘇生ができる医師の監視下に限られます。

家庭だけでなく、学校などでの使用についても環境整備が進んでいます。2026年4月には、こども家庭庁・文部科学省・厚生労働省から通知が出され、医師からの書面による指示や保護者からの依頼など、一定の条件を満たした場合には、教職員などが児童生徒に投与しても医師法違反にはならないことが示されました。ただし、0~5歳の乳幼児について、保育所などで職員が預かって投与することは想定されていません(2026年9月時点)。

一方で、傾眠や意識レベルの低下などを生じることがあります。そのため、投与後は患者の意識状態をよく観察し、投与後の対応、救急要請の目安などについて、あらかじめ主治医と十分に確認しておくことが重要です。

【参考資料】

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